アニメーションブートキャンプ 3Dトライアル【終了】
概要
アニメーションブートキャンプ 3Dトライアル
文化庁委託事業 | 平成27年度メディア芸術連携促進事業 連携共同事業
2016年度の新たな試みとしてテスト的に実施した3DCG版のアニメーションブートキャンプです。
日時:平成28年12月23日(金・祝)10:00~17:00
会場:株式会社ボーンデジタル トレーニングルーム
参加人数:8名(男6名・女2名)大学生3名、大学院生2名、専門学校生2名、社会人1名
実施体制
講師
- 中島智成(CGディレクター/株式会社武右ェ門)
- 山田裕城(CGデザイナー、監督/株式会社武右ェ門)
ディレクター
- 竹内 孝次(アニメーションプロデューサー)
- 布山 タルト(東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻 教授)
プロデューサー
- 岡本 美津子(東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻 教授)
マネージャー
- 面髙 さやか(フリー)
事務局
- 森ビル株式会社
募集方法
今回はテストケースとして、大学・大学院・専門学校とバランスよく参加者を集めることを重視し、一般公募ではなく、関東近郊の3DCGを学ぶカリキュラムを持つ学校に協力頂き、4校の先生から7名の学生を推薦して頂きました。加えて今年の短期・合宿と全てのワークショップに一般募集で参加し、プロの3DCGクリエーターとして制作会社で働く方にも参加して頂き、計8名の参加者を集めました。
カリキュラム
アニメーションブートキャンプの3つの基本理念「自己開発・自己発展できる人材を育てる」「観察することの重視」「他者に伝わる表現の重視」に基づいた、3つの段階的な課題に取り組んでもらうカリキュラムです。参加者は2〜3人のグループに分けられ、グループごとに作業を進めてもらいました。
株式会社武右ェ門のご協力を得て、同社が制作した『風の又三郎』で実際に使用した主人公のモデルデータをご提供頂き、そのモデルを動かしながら演技を追求してもらいました。
演技を考える手がかりとなるオノマトペの使用、実際に演じてみる身体性の重視、試行錯誤の過程で他者に見てもらう過程の重視など、指導方法の多くはこれまでのブートキャンプの方法論を用いました。さらに3Dトライアル独自の試みとして、ポーズを模索するための「サムネイル」の描画指導などを行い、その効果を検証しました。
アンケート結果
今回の内容は、あなたにとって面白かったですか。
- ・非常に面白かった 87.5%(7名)
- ・ある程度は面白かった 12.5%(1名)
- ・どちらともいえない 0.0%(0名)
- ・あまり面白くなかった 0.0%(0名)
- ・全く面白くなかった 0.0%(0名)
今日の体験の中で、印象に残っていることは何ですか?
- ・自分でバリバリ動きながらアニメーション付けしたこと。
- ・出来上がった作品の講評で細かい指摘をもらえたことと、講師に質問ができたこと。
- ・アニメーションの作り方、考え方が千差万別だったこと。
今日学んだことは、今後、あなたの制作の役に立つと思いますか?
- ・非常に役に立つ 62.5%(5名)
- ・ある程度は役に立つ 37.5%(3名)
- ・どちらともいえない 0.0%(0名)
- ・あまり役に立たない 0.0%(0名)
- ・全く役にたたない 0.0%(0名)
ブートキャンプに参加する以前と今とで、自分の考え方に何か変化はありますか?
- ・大きな変化がある 12.5%(1名)
- ・ある程度は変化がある 62.5%(5名)
- ・どちらともいえない 25.0%(2名)
- ・ほとんど変化はない 0.0%(0名)
- ・全く変化はない 0.0%(0名)
(「変化がある」と答えた方へ)それは具体的にどのような変化ですか?
- ・クリエイティブな仕事や目標に向かって努力する姿勢。
- ・CGアニメーターの仕事がどういうものなのか、意識することができた。
- ・「絵を見て絵を描かない」という考え方がとても参考になった。昔、「ゲーム会社に入りたければ、ゲームをやっていなければいけない」という考え方を言っている方がいたので、必ずしもそうでないということが知れて良かった。
今回の体験で、印象に残っていることや感想など
- ・ソフトに依存しないCGアニメーションの基本的な考え方を学ぶことができたと思う。定期的に開催されるようならまた参加してみたいと感じた。
- ・自分の学校では実制作を行うカリキュラムが他校と比べて充実していないので、今後開催が続くといいなと思った。とても刺激になると思う。
オブザーバ−からの評価
全体的な評価
- ・2Dと3Dの垣根を越えて、人がどのように動くのか観察から始めて、他者に伝わりやすい表現にするという根本的な姿勢を学び、アニメーションの動かす面白さの本質が見えるWSだった。
- ・様々な大学、専門学校の学生たちが一緒にワークショップを受けることで、ふだんと違う感性に触れ、刺激を受けた様子であった。
- ・3Dモデルと課題が与えられて、各自が発見するというプロセスがうまく機能した密度の濃い時間だった。
- ・3DCGトライアルのような取り組みは実際の制作会社でもニーズがあると思われるので、展開に期待している。
- ・WSで使用したキャラクターの素材が良かった。学生があれだけきれいなセットアップやディグが入っているモデルを使えることはそうそうない。プロが実際に使っている素材を使えることは参加者にとってとても貴重な経験であり、良いことだと思った。
- ・最初のスケッチは、絵が得意でなくても自分が考えていることを定着させる、整理する方法として有効だった。
手描きによる2Dアニメーションと3DCGの比較、横断の可能性
- ・3DCGは最初と最後のキーを指定すれば何となくは動かせてしまうが、作画(=2D)の場合、描かないと絵は動かない。技量が高くなくても動かせてしまうのはCGの良いところであるが、違和感のない、ちゃんと演技をしているアニメーションにしようと思うと細かい調整のトライアンドエラーが必要。
- ・2Dのように絵を描く部分を省略できるので、3DCGは、より動きに時間をかけられるともいえる。鍛えれば、もっとレベルの高いアニメーターが育成できるのでは。
- ・ブートキャンプで一生懸命演技に注力してやったとしても、2Dアニメーションの現在の需要は、どちらかというとイラスト寄りになっていて、動かすという演技の方に集中するという作品が少なく、絵が上手い人が重宝がられる傾向にあるように感じる。一方、3Dは手付けによる優れた動きが作れる3DCGアニメーターの需要がとても高い。
- ・2Dのアニメーションのノウハウがいかに3Dに役に立つのか。今回のような3DCGのワークショップに、できあがった映像を講評するという役割で2Dのアニメーターが参加すると検証できるのではないか。