アニメーションブートキャンプ新潟2022実施レポート
令和4年11月26日(土)と27日(日)の2日間、「アニメーションブートキャンプ新潟」が開催されました。
会場は開志専門職大学の古町ルフルキャンパス。新潟でアニメーションを学ぶ27人の学生※が参加しました。
※大学生17人、専門学校生10人。参加者の所属校は開志専門職大学、長岡造形大学、日本アニメ・マンガ専門学校。
このワークショップのねらいは、アニメーション表現の核となる「伝わる表現」の基礎となる考え方を、体験的・協同的に学んでもらうこと。参加者は6つのグループに分かれ、2D手描きの複数の課題に取り組みます。
今回、指導にあたった講師は以下の6人です。
後藤 隆幸 (アニメーター、キャラクターデザイナー/株式会社プロダクション・アイジー)
小村方 宏冶(アニメーター、演出 /株式会社プロダクション・アイジー 新潟スタジオ)
富沢 信雄 (アニメーション監督/株式会社テレコム・アニメーションフィルム)
藤巻 廉(アニメーター、原画、作画監督 /株式会社プロダクション・アイジー 新潟スタジオ)
三浦 菜奈 (アニメーター)
漁野 朱香(アニメーター/株式会社スタジオポノック)
今回の講師のうち、漁野朱香さんは学生時代にアニメーションブートキャンプを受講した経験をお持ちの方です。その後プロとして経験を積み、今回、初の講師参加となりました。
ワークショップ1日目は、竹内ディレクターによるオリエンテーションの後、五感を目覚めさせるための身体を動かすレッスンからはじまりました。メトロノームを使用し様々なテンポで歩いたり、架空のボールやなわとびで遊ぶ「エアキャッチボール」や「エアなわとび」など「シアターゲーム」の体験を通じて、動きのイメージを伝え、他者と共有することを学びます。
思い切り身体を動かした後は、6つのグループに分かれて本格的にアニメーションの課題に移行します。
各グループの学習をサポートするティーチングアシスタントを担当するのは、昨年のワークショップ受講生たちです。
まずはアニメーションの基本である「歩き」の課題に取り組みます。はじめに自分達の身体を使って「歩き」のテンポを確認します。前回の「アニメーションブートキャンプ名古屋」と異なる新たな試みとして、スマートフォンのメトロノームアプリを使用して、歩きのテンポを確認してもらいました。
次に、グループ内でコミュニケーションをとりながらポーズを吟味するために、紙で出来た関節人形を並べて必要なポーズを吟味し、布山ディレクターが開発したKOMA CHECKERというアプリで撮影してアニメーションにします。
各グループの作品上映の後、富沢講師と竹内ディレクターによる「歩き」の表現におけるポイントについてのレクチャーが行われました。
次の練習課題は「演技を含む歩き」です。
グループ毎にくじ引きで決まったシチュエーションを元にオノマトペと歩きのテンポを決め、手描きの作画でキャラクターをアニメートします。
完成した「歩き」の上映時には、どのような「歩き」をイメージしたのか、スクリーンの前で実演してもらい、それをアニメーションと見比べました。
以上の「歩き」の練習課題の次は本番課題へ進みます。
基本の絵コンテを元に、各カットを1人ずつ担当し、計5カットのシーンを完成させます。男の子が箱を持ち上げて運ぶという簡単なストーリーですが、男の子の性格、箱の中身、シチュエーションが異なる6つのシナリオが用意され、各グループにくじ引きであてがわれます。
教室内には、風船、米、水が入った箱が用意され、実際にその重さを感じてポーズを確認しながら作画していきます。またグループ内でお互いの演技の認識にズレが生じないように、この課題でもオノマトペとテンポをはじめに決めてもらいました。
講師たちは言葉で助言するだけでなく、実際に絵を描いて見せながら、基本的なポーズの考え方や作画のコツを、丁寧に指導していきます。
2日間の制作を終え、全てのグループの完成作品が上映されました。上映時には自分たちがイメージしたオノマトペを効果音としてあててもらいました。
上映の後、講師とのQ&Aセッションが行われました。「学生のうちに取り組んでおくと良いことは」「学生時代にどのようにして学びを得たのか」など、今後の学びへの助言を求める質問や、「原画の仕事をするには、どのような能力が必要なのか」「アニメーション制作での辛かったところ、楽しかったところ」など、将来のアニメーション業界への就業を視野に入れた質問も多く出され、一つ一つの質問に各講師が丁寧に回答していました。
Q&Aを終え、最後は講師から受講生たちにブートキャンプの修了証が手渡され、全プログラムを終了しました。
Q.ブートキャンプに参加して自分の中でどのような変化がありましたか?
●就職に向けての気持ちが高まった。決められた時間内に決めた目標を達成する感覚がつかめました。
●頭でイメージするのではなく、実際に演技することで伝わる映像になるということがしっかり理解できてよかったです。
●動きについて、実際に自分が演技してみて描くのが大事だということ。そのキャラの性格や体型などについてよく考え、作画することが大切だということを理解しました。
●絵を描くスピードに関して、これまで通りだと良くないなと思いました。絵の絶対量を増やすというのが、感覚的にどういうことなのか体感した気がします。
●動きの観察だけに重きを置くのではなく、キャラクターの気持ちになって演じなければアニメーションは描けないのだと思いました。
●動きを記号的に描くのではなく、実際にやってみてニュアンスの変化を感じとる意識がつきました。
●想像で演技を作るのではなく、実際にやってみて演技を作ることの重要性を知りました。
Q.今回のワークショップで、あなたはどのようなことを学んだと思いますか?
●アニメーションにおいて自然な動きとは何か。
●現時点での自分の実力を知り、また同年代で他校の生徒との相違点を学ぶことができました。
●人とアニメを作る楽しさと厳しさを両方学べました。
●動きをつくるためにはその動きをきちんと研究するのが大切だということ。
●体験して考えることの大切さを学びました。
●グループ内の打ち合わせでコミュニケーションを積極的に取ることの大切さを学びました。講師の方や同じグループの人から意見を貰ったり、自分が意見を出したりすることで、演技の解釈を深めたり描いた動きを客観的に見て改善するにはどうするべきかを考えることができたのが貴重な体験でした。技術だけでなく、動きに対する向き合い方のようなものを学べたように思います。今後の自分の制作に活かしていきたいです。
●歩きの基本の重心や力の入り方、重さ軽さの表現など、分かってなかったことも学べて引き出しが多くなりました。
●アニメーションで必要不可欠な演技を作る考え方を学ぶことができた。なんのアニメーションを作るにしても、まず自分自身で演技し、体感することが必要であるということに気づき、大きな刺激になりました。
●自分で体を動かして感じたことや調べたこと、考えたことを見た人に伝わるように描くことの大変さ、面白さをより一層感じました。重さの表現ってすごい…!!
●演技を実際にやってみることの重要性や、他の学校の人と積極的に交流すること楽しさを知ることができました。