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アニメーションブートキャンプ名古屋2022実施レポート

令和4年9月3日(土)と4日(日)の2日間、「アニメーションブートキャンプ名古屋」が開催されました。

 

会場は名古屋学芸大学の日進キャンパス。参加者は、愛知県立芸術大学、大垣女子短期大学、静岡文化芸術大学、名古屋学芸大学、名古屋工学院専門学校、名古屋造形大学、名古屋文理大学、HAL名古屋、バンタンゲームアカデミー東海地域の9つの学校から合計30人の学生が参加しました。

 

 

このワークショップのねらいは、2Dと3Dを問わずアニメーション表現の核となる「伝わる表現」の基礎となる考え方を、体験的・協同的に学んでもらうこと。参加者は6つのグループ(3グループは2D手描き、3グループは3DCG)に分かれ、複数の課題に取り組みます。

今回、指導にあたった講師は以下の6名。みなさん第一線で活躍するアニメーターやディレクターです。

小森 よしひろ(ディレクター・アニメーション・VFX/株式会社白組)
斎藤 俊介(映像ディレクター・アニメーションディレクター)
中島 智成(CGディレクター・CGアニメーター)
富沢 信雄 (アニメーション監督/株式会社テレコム・アニメーションフィルム)
山田 桃子(アニメーター/スタジオななほし)
りょーちも(アニメーター・キャラクターデザイナー・アニメーション監督)

 

 

ワークショップ1日目は、挨拶とオリエンテーションの後、身体を動かすレッスンからはじまりました。様々なテンポで歩いたり、架空のボールやなわとびで遊ぶ「エアキャッチボール」や「エアなわとび」など「シアターゲーム」の体験を通じて、動きのイメージを伝え、他者と共有することを学びました。

「シアターゲーム」はもともと演劇の世界で役者のトレーニング用に開発されたものですが、アニメーションブートキャンプではアニメーターの導入教育として用いており、緊張感を和らげるという意味でも有効です。

 

 

思い切り身体を動かした後、教室を移動して本格的にアニメーション表現の課題に移行します。まずはアニメーションの基本である「歩き」の準備課題です。グループ内でコミュニケーションをとりながら動きを吟味するため、紙で出来た関節人形を使い、自分たちの身体でもポーズをとって確認しながら検討を進めます。

 

 

 

 

富沢講師によるレクチャーで「歩き」の表現におけるポイントを理解した上で、今度は「演技を含む歩き」の練習課題に取り組みます。2Dグループは手描きの作画、3DCGグループはBlenderでキャラクターをアニメートします。

 

完成した「歩き」の上映時には、どのような「歩き」をイメージしたのか、スクリーンの前で実演してもらい、それをアニメーションと見比べました。

 

 

以上の「歩き」の練習課題の次は本番課題です。基本の絵コンテをもとに、各カットを1人ずつが担当し、計5カットのシーンを完成させます。男の子が箱を持ち上げて運ぶという簡単なストーリーながら、箱の中身や男の子が置かれた設定はグループごとに異なるので、その重さやキャラクターの感情を表現するところが難しい、奥の深い課題です。教室内には、風船、水槽、米などの入った箱が用意され、実際にその重さを感じてみながら演技を考え、表現を吟味することが繰り返されました。

 

 

2日間の制作を終え、全てのグループの完成作品が上映されました。上映時には自分たちがイメージしたオノマトペを効果音としてあててもらいました。

 

上映の後、講師とのQ&Aセッションが行われました。「参考になる作品は」「観察というのは具体的に何を見ているのか」などの今後の学びへの助言を求める質問の他、「今の現場で求められているのはどんな人材か」「長く仕事を続けるために気をつけていること」「アニメーション業界のいいところ、悪いところ」など、将来のアニメーション業界への就業を視野に入れた質問なども多数出され、一つ一つの質問に各講師が熱く回答していました。

 

 

Q&Aを終え、最後は講師から受講生たちにブートキャンプの修了証が手渡され、全プログラムを終了しました。


Q.ブートキャンプに参加して自分の中でどのような変化がありましたか?

●動きひとつひとつをより具体的に観察できるようになりました。
●進路に悩んでおり作品制作に迷いがあったが、現場で活躍するアニメーターの方々の話を聞いてとにかくやれることをどんどんやっていこうという気になれた。
●以前はキャラクターの動きを頭の中で想像して描いていたけど、実際に自分で動いてみる事で、よりキャラクターが自然な動きになると思いました。
●演技をする動きや伝わりやすい動きなど、動きを考える時の視点が変わった。
●アニメーションを作るモチベーションが向上した。
●歩く動作でもそのキャラクターの置かれている状況や性格によって全く違うことを知り、そのキャラクターに一番当てはまっている動きはどう言ったものなのか知りたいと思ったことです。他にもキーポーズを最初から細かく入れるのではなく、メインとなるポーズを入れていく方が制作する時に楽ということを学びました。
●実際に現場で活躍している方の話を聞いていてアニメーションに限らず自分の強みを見つけることが大事だなと思いました。
●卒業制作でアニメーションを作ろうと思っていて参加前より制作意欲が上がりました。
●アニメーションは1人で作るものではなく、誰かとつくるものだと考えるようになりました。

 

Q.ブートキャンプの経験は、今後の活動にどのような影響があると思いますか?

●ブートキャンプを通して、アニメーション業界に入りたいという思いがさらに強まった。
●今までアニメーション業界に強い興味があったが不安要素が多く目標に素直になれずにいた。しかし今回の体験で同じ志の仲間や講師陣に出会い、アニメーション制作の難しさ、面白さを知り今後もっと技術を向上していきたいと素直に思えるようになった。
●軽々しく「アニメーターになりたい!」と言っていたけど、そんな甘くないことに気づくことができ、もっともっと描かないとプロには全く及ばないなと強く感じた。
●アニメーションを仕事にするということについてのイメージがなかなかできなかったので、今回実際に働いている方々の雰囲気や考え方を垣間見ることができたことで、より具体的に進路について考えることができた。
●今まではどちらかというとモデリングを中心に学んでいましたが、今回のワークショップでアニメーションをつける面白さを知り、アニメの仕事への興味が強くなりました。
●職業をアニメーターとコンポジターで悩んでいたのだが、空想し、体験・体現し、誇張も入れつつより良いアニメーションを作るという所に楽しさを見いだしてしまったので尚更悩むことになった。
●動きを作っていく楽しさと大変さを実感できたために自分は今後もやっていきたいか考えさせられました。
●動きについて今回の2日間でかなり知ることができました。特に動くときの腰の位置や重心がどこにあるのか深く考えず作っていたことが多い感じ今後はもっとそう言ったところを意識しようと思いました。
●アニメーションの仕事に前より興味がわきました。今の実力では会社に入ることや携わることすら難しいと思いますが、でも少しずつでも力を付けれたら良いなって思い、いつかアニメーション制作ができたらいいなって思いました。

Q.今回のワークショップで、あなたはどのようなことを学んだと思いますか

●「伝わる」動き、自然な動きなど、動きに対してどれだけ真剣になれるか、こだわるポイントなど。
●アニメーションをつけるための観察の仕方。アニメーションをつける上での意識をすればいい点。
●物事を組み立てる上で必要な考えやプロセス、素早くイメージを出力していく方法。
●アニメーションの難しさと深さ。アニメを作る人の凄さ。アニメーションができた時の達成感。今の実力をもっともっと上げるためにとにかく色んなものを意識して見るようにし、とにかく人よりも描くようにしたいと思いました。あとチャレンジする気持ちを忘れないようにしたいなと感じました。
●アニメーションを共同で制作する難しさを学べたと思います。ただ歩くという動作だけでも色々な感情の表現の仕方があって、全然違うものになりました。歩きだけでなく人のしぐさや反応、動作一つで感情を伝えることもでき、観察したり実際に演じてみることが重要なんだなと思いました。
●自分で動きを試すことの大切さを学びました。また、こう動く時はこうなるということを実感したり注意すべきポイントを学ぶことが出来ました。
●シチュエーションに応じたアニメーションを作ることの重要性を学べた。アニメーターは作りたい動きを表現するための演技力、想像力を養う事が重要なのだと強く意識させられた。また意見交換をすることで自身に不足している点を露わにし、他者の優れた点を取り入れることができたのは得難い経験だった。
●今活躍されているアニメーターの方達は実力や経験があってこそなんだと思いました。また、制作における技術だけでなく、コミュニケーション能力がすごく大事だと思いました。1人ワンカットを担当するときに次のカットを担当してる人と必ず話し合いをしないと成り立たないし自然に見えないんだと思いました。
●重心の捉え方と、「伝わる」アニメーションの考え方を学びました。それがオノマトペからアニメーションを作る意義だったのだと感じます。