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『アニメーションブートキャンプ京都』実施レポート

令和5年11月11日(土)・12日(日)に「アニメーションブートキャンプ京都」が開催されました。

会場は京都芸術大学の瓜生山キャンパス。関西地区を中心に全国各地から26人※が参加しました。
※※2D手描き参加者24人、3DCG参加者2人。

このワークショップのねらいは、アニメーション表現の核となる「伝わる表現」と「自然な演技・人間らしい動き」をアニメーションで実現するための基礎となる考え方を、体験的・協同的に学んでもらうこと。

参加者は6つのグループに分かれ、グループ課題に取り組みます。そのうち1グループは、2D手描きの学習者と3DCGの学習者の混成グループです。

今回、指導にあたった講師は以下の6人です。

・ 後藤 隆幸(アニメーター・キャラクターデザイナー/株式会社プロダクション・アイジー)
・ 斎藤 俊介(映像ディレクター・アニメーションディレクター)
・ 佐藤 好春(アニメーター/日本アニメーション株式会社)
・ 武本 心(アニメーター/日本アニメーション株式会社)
・ 漁野 朱香(アニメーター/株式会社スタジオポノック)
・ 渡辺 敦子(アニメーター・キャラクターデザイナー・漫画家)

ワークショップ1日目は、五感を目覚めさせるための身体を動かすレッスンからはじまりました。メトロノームを使用して様々なテンポで歩いたり、架空のボールやなわとびで遊ぶ「エアキャッチボール」「エアなわとび」などの体験を通じて、動きのイメージを伝え、他者と共有することを学びます。

 

身体を動かした後は、6つのグループに分かれて本格的にアニメーションの課題に移行します。

まずは竹内ディレクターから、ブートキャンプの進め方についてオリエンテーションの説明があった後、アニメーションの基本である「歩き」の課題に取り組みます。小さな子どもが歩いている状況設定と、ニュアンスを決めるオノマトペがくじ引きで決定され、その演技をカットアウト人形を使って表現する課題です。

グループで協力しあってポーズとテンポを検討し、布山ディレクターが開発したKOMA CHECKERというアプリで撮影。上映時には自分たちの身体を使った歩きの演技とアニメーションの演技とを見くらべます。

上映の後は、佐藤講師による「歩き」の講義を通じて、留意すべき点が説明されました。

以上の「歩き」の練習課題の次は本番課題へ進みます。
基本の絵コンテを元に、各カットを1人ずつ担当し、計5カットのシーンを完成させます。小さな子どもが箱を持ち上げて運ぶという簡単なストーリーですが、その子の性格、箱の中身、シチュエーションが異なる6つのシナリオが用意され、各グループにあてがわれます。
教室内には、風船や水が入った箱が用意され、実際にその重さを感じてポーズを確認しながら「サムネイル(演技に必要なポーズを見つけ出すために、小さなサイズでポーズを沢山描くスケッチ)」を描いていきます。またグループ内でお互いの演技の認識にズレが生じないように、この課題でもオノマトペとテンポをはじめに決めてもらいました。

「サムネイル」の段階の次は、ラフアニメーションの段階に入っていきます。ここからは2D手描きと3DCGでツールが分かれますが、取り組む課題は同じです。

講師たちは言葉で助言するだけでなく、実際に絵を描いて見せながら、基本的なポーズの考え方や作画のコツを、丁寧に指導していきます。

2日間の制作を終え、全てのグループの完成作品が上映されました。上映時には自分たちがイメージしたオノマトペを効果音としてあててもらいました。

上映の後、講師とのQ&Aセッションが行われました。受講生からのさまざまな質問に対して、6人の講師たちがそれぞれの経験にもとづいて丁寧に回答していました。

Q&Aを終え、最後は講師から受講生たちにブートキャンプの修了証が手渡され、全プログラムを終了しました。

 


 

Q.今回のワークショップで、あなたはどのようなことを学んだと思いますか?

  • アニメーションの描き方だけでなくアニメーションと人間との関係、アニメーションを作る時に必要な姿勢。そしてどれだけアニメーション制作が面白いことなのか、改めて気づくことができた。
  • 動きを観察する時のコツが少しわかった。自分が絵を描く時に気をつけていること、見ているポイントなどの意識がまだまだ低いことがわかった。もっとたくさんの映像を観て引き出しを増やさなければいけないと感じた。
  • アニメーションを作る上で、動きを表現するための手段や工程を学べました。そのなかで、表現したい動きのニュアンスを捉える考え方や、原画の間にどのタイミングで中割りを入れるかなど、基本となる部分をたくさん学べたと思います。
  • 動きや演技を自分の体で試す重要さや、動きを考え描くことの楽しさ、悩んだら人に聞いて個人の考えや客観的な意見をもらうのも自分の中だけで完結させないためには大事だということ。
  • 人を感動させるものというのは意外とこういった、シンプルだけどキャラクターらしさや感情がのった動きなのかなと思いました。
  • 時間をかけてひとつのキャラを見た目を揃えて全員で同じ作品を作るというのは本当にいい経験になったと思います。また、今まで何となくでやっていたタイムシートの使い方が実際に指導して頂いたことで、2日間を通してだいぶかけるようになりました。制作以外では、短い時間の中で今やるべきことを書き出して、それに向けてまず取り組むというのは今後の制作でも取り入れていこうと思います。
  • 人とコミュニケーションを取り、演技プランを考えることが初めてだったのでとても勉強になりました。
  • 就活のことで頭がいっぱいで、アニメーションの根本的な楽しさや向き合い方をもう一度味わい直すことが出来ました。また、誰かと意見を交わしたり、共同作業で一つの作品を作り上げることの面白さと大変さを感じました。
  • チームで真剣にモノ作りをする楽しさと責任を学びました。自分たちが任された仕事をできるだけいい物にしてみんなで一つの成果物に向かって時を過ごすというのは、そこでしか得られない達成感があるなと感じました。普段の仕事とは少し毛色の違う緊張感の中でアニメーションの制作をやり切れたという体験は、今後の制作時にも思い出して頑張っていこうとおもいます。
  • アニメーションの動きの作り方や考え方など様々な事を学ぶことが出来ました。同じシチュエーションでもキャラクターの性格によって各班全く違うアプローチをしていたのがとても面白かったです。キャラクターの演技の大切さと、自分で1度演じてみる大切さがとても理解できました。
  • インターネットで上手い人の作画を見るよりも、やはり直接プロの方の描き方を見て、指導を受け、手を動かしてみることが圧倒的に自身の力を養うことにつながること。
  • 自分で動くこと、原画をちゃんと全部描いてから中割りをやる大切さ、重心の移動を意識すること、曲線で描くようにすること、人物の性格、置かれた状況をよく考えることなど、沢山のことを学びました。
  • 大学の授業でも今回のワークショップほどしっかり動いたことはなく、グループワークも1つのアニメーションを作ることはありますが、歩くなどの動きに対して、みんなで意見を出し合い作り出すことはなかったので新鮮だった。みんなが動きを作り出すのにこのようにイメージをして実際に動いて作り出しているのだなと、自分とは違うイメージの動きを新たに学べました。

 

Q.ブートキャンプに参加して自分の中でどのような変化がありましたか?

  • 演技・動きを考える上でやることの根本的な部分がハッキリした。アニメーションとして表現するときに思い込みで描き進めず、動きを自分でとことんやって考えること。キャラクターがハッキリしているよりも、動きのわかるラフや、骨格などが狂っていないほうがラフとして重要だということ。アニメーションを学んできて最初に言われた重要なこと・失念していたことを思い出して、基本の動きを初心に戻って出来たのがとても良かった。
  • シンプルな日常動作の中でもキャラクターらしさや、ものの特徴などを意識してきちっと描くと、それだけで観る人に何かしらの感情を植え付けることが出来るんだな、という考え方を授かりました。
  • 2日間みっちりしたスケジュールの中、あの描きやすいキャラを歩かせて演技させるだけで、これだけ時間がかかっていたらとてもじゃないけどアニメーターにはなれないなと思い、今後のアニメーションとの向き合い方の意識がだいぶ変わったと思います。
  • 頭の中にある動きをどう表現していくか、グループで話し合い相談して決めていく様子がとても勉強になりました。
  • ほとんど独学でアニメーションを学んでいるので、自分の感覚が合っているかどうか、実力はどのくらいかなど不明なことが多かったですが、今回プロのアニメーターの方々や、同じ年代の人たちの話を聞くことで新たに分かることがたくさんありました。
  • 今まで人を動かすアニメーションを制作してきたことはあっても、ここまで1つの動きに集中し全体の演技を自分自身で動いてみることでどんなテンポやシルエットが自然かどうかなどを考えた経験が少なかったので、2日間楽しかったです。より自然な動き・面白い動きとは何か考え制作することに対する姿勢が変化しました。
  • 動作を描く時に一枚上手く描ければ良いのではなく、一連の流れからその動作を把握し、適切なコマ数を理解することも必要だということ。
  • 絵との中を割る時にその時どう動くかの想像や、動きができてからそのキャラにあった動きを入れていく段階的なアニメーションの構築の仕方などの考え方が変わりました。
  • 絵を描くことへのモチベーションが上がった。