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令和6年度『アニメーションブートキャンプ1Day神戸』実施レポート

令和6年10月6日(日)に「アニメーションブートキャンプ1Day神戸」が開催されました。

このワークショップのねらいは、アニメーション表現の核となる「伝わる表現」の基礎となる考え方を、体験的・協同的に学んでもらうこと。参加者は12のグループに分かれ、2D手描きの課題に取り組みました。

会場は神戸電子専門学校。関西を中心に各地から48人※が参加しました。
※参加者内訳:大学生29人、専門学校生18人、就業者(一般)1人。/ 参加者居住地:兵庫22人、京都11人、大阪6人、愛知4人、奈良2人、滋賀1人、富山1人、東京1人。

今回、指導にあたった講師は以下の5人です。

  • 後藤 隆幸(アニメーター・キャラクターデザイナー/株式会社プロダクション・アイジー)
  • 斉藤 拓也(アニメーター)
  • 瀬谷 新二(作画監督、株式会社手塚プロダクション製作局 作画部長)
  • 富沢 信雄(アニメーション監督/株式会社テレコム・アニメーションフィルム)
  • 漁野 朱香(アニメーター/株式会社スタジオポノック)

各講師が2つのグループを担当する形で指導が行われました。

はじめに〜事前課題のふりかえり

ワークショップは、まず事前に提出されたスキルチェッカーの課題(「見て納得できるポーズを描く」)へのフィードバックからはじまりました。竹内ディレクターによる課題全体に対する総括の後、グループごとに、担当講師によるグループごとの総括が行われ、個別の課題に焦点を当ててフィードバックが行われました。

課題の説明

導入パートを経て、いよいよ今回のワークショップのメイン課題『意思のある動作』の制作に取り組みます。課題内容は、「男の子のキャラクターが椅子に座っている/立っているときに、特定の状況に出会い、椅子から立ち上がる/座る演技」をアニメーションで描くというものです。「特定の状況」が書かれたシナリオはあらかじめ複数用意されており、グループごとにくじ引きで割り当てられます。

演技を考える

メイン課題の最初は、グループで「演技を考える」フェーズです。シナリオをベースに何度も実際に演じてみながらオノマトペ(擬音語・擬態語)を決め、グループ内で「はじめのポーズ」と「おわりのポーズ」を統一するとともに、演技をストップウォッチで計測し、動作にかかる時間を確認します。

サムネイルを描く

次は、動きの全体像を試行錯誤するために1枚の紙の上に小さな絵で一連の動作を描く「サムネイル」を描くフェーズです。この段階では、最低5つのポーズを見つけて描くことが目標です。

タイミングの確認

描いたポーズは布山ディレクターが開発したラインテストツールKoma Checkerで撮影し、すぐに動きを確認することができます。撮影に際しては「タイムシート」と呼ばれるタイミングの設計図を作り、それに従って撮影を行います。
途中、グループごとにサムネイル映像の再検討が行われ、タイミングの調整や各自が見つけるべきポーズについて講師からの助言を受けます。

ラフ原画を描く

次に、サムネイルをもとに動画用紙に一枚ずつラフ原画を描いていきます。描いた絵を撮影して動きを確認する作業を繰り返しながら、都度講師の助言を得て、動きを洗練させていきます。

上映と講評

メイン課題の最終上映では、グループによる実演を含めた上映を行い、上映後には講師によるグループごとの講評と、ディレクターによる全体の総評が行われました。

Q&Aセッション

上映の後、講師とのQ&Aセッションが行われました。受講生からの、「中割りや原画の上達方法」や「戦闘シーンを魅力的に見せるコツ」などの作画に関する質問や、「アニメーションの演出家になる方法」や「アニメーターのポートフォリオで重要なポイント」など、アニメーション業界に関する質問が活発に寄せられ、5人の講師たちがそれぞれの経験にもとづいて多角的に回答していました。

Q&Aを終えて1日のプログラムは無事に終了しました。参加者のみなさん、おつかれさまでした!

 


参加者アンケートからの抜粋

 

Q.ブートキャンプに参加して自分の中でどのような変化がありましたか?

  • 一つ一つの動きをよく観察するようになり、発想の幅も広がった
  • 動きに対する興味や、実体験の大切さなどアニメーションへの向き合い方に変化を感じます。
  • 重心に対しての意識がより強くなった。
  • 今まで動きを描くときはスマホに頼りがちだったので、何度も自分で動いてみて、スマホを使わないで描くというのは、動きについて本気で考える良いきっかけになりました。
  • 今まではタイムシートを打つことが苦手で疎かにしてしまうことがあった。しかし秒数を図り何度も演技することで尺が決まり、調整しながら打っていくことでよいアニメーションを作ることができるという事がわかった。
  • 複数人で行うアニメーション制作をしたことがなく、意見を合わせることなどが難しく感じましたが、自分が持っていない考えを聞けて、新しい視点を手に入れられてとても実りある体験だったと思いました。
  • もっと上手くなりたいという気持ちが湧いてきました。
  • 自分の力を上げてアニメ業界に入りたいともっと強く感じました。

 

Q.今回のワークショップで、あなたはどのようなことを学んだと思いますか?

  • キャラクターを動かす時の重心やポーズの重要さ。
  • 描く前にまず自分で動いて、動きの発見をしていくことを学びました。動きの発見をするためには、常に動きを意識しながら生活することが大切だと感じました。
  • より良い動きを作るためには、粘り強く描き進めていくことだと学んだ。また同年代のアニメーション業界を志望する方々といろんな話もできて、焦りもあるが嬉しかった。
  • タイムシートを打つコツ。中割の位置、中割枚数によって動きが大きく変化すること。またコミュニケーションの大切さ
  • アニメ制作の流れ。動かす楽しさ。想像ではなく実感が大切だということ。
  • オノマトペを用いて、アニメーションを作ることで、普段の何気ない動きを描くときにも、設定を決めることの大切さを学べたと思います。また、サムネイルで先に動きを書き出すことで普段よりアニメーションが描きやすいと感じました。
  • 上達に近道はないということ。
  • 頭で考えることも大事ですが、実際に体を動かしたりして答えを探るのもとても重要だと学びました。
  • 人との円滑なコミュニケーションの進め方や伝えやすくするためにどう行動したら良いかを、グループワークで学ぶことができました。アニメーションでは何度も動きを研究し観察していくことがうまく表現できる一歩に繋がるのだと学びました。

 

Q.今回の体験は面白かったですか?

  • とても面白かった     84.4%
  • 面白かった        15.6%
  • どちらともいえない    0.0%
  • 面白くなかった      0%
  • まったく面白くなかった  0%