令和6年度『アニメーションブートキャンプ1Day東京』実施レポート
令和6年11月24日(日)に「アニメーションブートキャンプ1Day東京」が開催されました。
このワークショップのねらいは、アニメーション表現の核となる「伝わる表現」の基礎となる考え方を、体験的・協同的に学んでもらうこと。参加者は12のグループに分かれ、2D手描きの課題に取り組みました。
会場は東京の日本電子専門学校。全国各地から57人※が参加しました。
※参加者内訳:大学・大学院生:28人、専門職大学生:1人、専門学校生:14人、無認可校生:4人、高校生:4人、アニメ関連就業者:2人、その他就業者・アルバイト:4人。/ 参加者居住地域:東京都 27人、埼玉県 6人、神奈川県 5人、静岡県 5人、千葉県 3人、京都府 3人、新潟県 2人、北海道 1人、長野県 1人、富山県 1人、愛知県 1人、石川県 1人、大阪府 1人。
今回、指導にあたった講師は以下の方々です。
- 後藤 隆幸(アニメーター・キャラクターデザイナー/株式会社プロダクション・アイジー)
- 佐藤 好春(アニメーター/日本アニメーション株式会社)
- 山田 桃子(アニメーター/スタジオななほし)
- りょーちも(アニメーター・キャラクターデザイナー・アニメーション監督)
- 漁野 朱香(アニメーター/株式会社スタジオポノック)
- 渡辺 敦子(アニメーター・キャラクターデザイナー・漫画家)
補助講師
- 山本 陽介(アニメーター/日本アニメーション株式会社)
はじめに〜事前課題のふりかえり
ワークショップは、事前に提出されたスキルチェッカーの課題(「他の人に伝わるようにポーズを描く」)へのフィードバックからはじまりました。竹内ディレクターから、演技を定型に当てはめるのではなく、シチュエーションを自分なりに想像してよく考えて描くこと、さらに描いてみた上で第三者に伝わる表現になっているかを自己評価できることが大事だと説明されました。
課題の説明
導入パートを経て、いよいよ今回のワークショップのメイン課題『意思のある動作』の制作に取り組みます。課題内容は、前回の神戸とほぼ同じで、「男の子のキャラクターが椅子に座っている/立っているときに、特定の状況に出会い、椅子から立ち上がる/座る演技」をアニメーションで描くというもの。
演技を考える
メイン課題の最初は、グループで「演技を考える」フェーズです。グループごとに実際に演じてみながらオノマトペを決め、グループ内で「はじめのポーズ」と「おわりのポーズ」を統一するとともに、演技をストップウォッチで計測し、動作にかかる時間を確認し、「タイムシート」と呼ばれる時間の設計図をおおまかに作成します。
サムネイルを描く
次は、動きの全体像を試行錯誤するために1枚の紙の上に小さな絵で一連の動作を描く「サムネイル」を描くフェーズです。この段階では、最低5つのポーズを見つけて描くことが目標です。
タイミングの確認
描いたポーズは布山ディレクターが開発したラインテストツールKoma Checkerで撮影し、すぐに動きを確認することができます。撮影に際しては「タイムシート」と呼ばれるタイミングの設計図を作り、それに従って撮影を行います。
撮影した映像をみんなで見て、サムネイル映像の検討を行い、各自が見つけるべきポーズについて講師から助言を受けます。
ラフ原画を描く
次に、サムネイルをもとに動画用紙に一枚ずつラフ原画を描いていきます。
描いた絵を撮影して動きを確認する作業を繰り返しながら、何度も講師の助言を得て、動きを洗練させていきます。
上映と講評
メイン課題の最終上映では、グループによる実演を含めた上映を行い、上映後には講師によるグループごとの講評と、竹内ディレクターによる全体の総評が行われました。
Q&Aセッション
最後は講師とのQ&Aセッションです。アニメーションの作画に関する質問や、アニメーション業界に関する質問などが寄せられ、7人の講師がそれぞれの経験に基づいて丁寧に回答していました。
Q&Aを終えて1日のプログラムは無事に終了しました。参加者のみなさん、おつかれさまでした!
参加者アンケートからの抜粋
Q.ブートキャンプに参加して自分の中でどのような変化がありましたか?
- 業界で活躍する講師の方々、業界を目指す人たちとともにコミュ二ケーションをとりながら取り組むことができて、刺激を受け、業界の解像度が上がるとともに、自分はどう活躍できるのか、何がしたいのかさらに真剣に考えられるようになりました。
- 動きの考え方、重心の捉え方の理解を深めることができた。
- 中割りはただ単に原画の真ん中を取るのではなく、芝居の一部であり、原画から伝えたい印象へ繋げる役割を持っているのだなと強く感じたことです。
- 作業スピードをもっと上げないといけないことに気がついた。
- 書籍を読むだけでは得られない体感としての納得。本(『アニメーション <動き>のガイドブック』)の中ではキーポーズ/ブレイクダウンといった要素の絵をプロの方がいとも簡単に提示してくださっていたが、実際自分がやってみると、描き出した原画は適切ではなく、後から画を挿入しなければ思ったようなアニメーションにはならなかった。また、“同じ課題”に取り組む別の人の作品や、別のグループのアプローチを見ることで、正解は一つではないという講師の先生の意図する部分が体感を有して得られたように思う。
- 動作を考える際、今後積極的に言語化を試みていきたいと考えるようになった。
- 今までは「自然さ」だけを考えて動きを描いていたのが「感情」も考えて書こうと思うようになった。
- 今までは絵コンテをざっと描いていましたが、オノマトペで表現するという部分に学びを感じ考えに変化がありました。
- アニメーションの表現について考え方に変化がありました。これまでアニメーションをうまく描く方法の答えを自分自身見つけられていなかったのですが、今回のワークショップで画と画の間の動きを表現するということの大切さを理解しました。
Q.今回のワークショップで、あなたはどのようなことを学んだと思いますか?
- まさに「アニメーションとは何か」そのものを学ぶことができた気がした。アニメーションの基礎中の基礎であり最も核になっているところに触れたように感じた。
- アニメーションに対する意識、見る人に伝わる演技の大切さを学ぶ事ができました。
- 表面的なアニメ作りではなく、重心やボリューム感を大切にした丁寧なアニメーションへ望む姿勢です。
- プロたちの考え方と業界に関する情報。
- 演技をして描くということは自分でもやっていましたが、今回グループのみなさんと動きを共有し、同じものを目標に描くことで、自分がどのように伝えられていないか、どのように動かす癖があるかなど発見がありました。
- アニメを作るための基本的なノウハウ。人と協力しつつ取り組む楽しさ。時間を見つつ取り組まなければならないこと。間違いを恐れず、間違ってても良いから取り組むこと。
- いつも頭が固くなって悩みすぎてしまうが、今回のワークショップで少し柔軟に考えられるようになったと思う。
- 意志を持った動き・芝居のつくり方について学びが大きかったです。事前にビデオ講座にはすべて2回は目を通していて、手順や方法・概要は理解していたつもりでしたが、実際に自分で考えて手を動かすと思った通りに出来上がらず…見て学ぶだけではなくやはり自分でやってみること、試行錯誤・チャレンジしていくことが大切だなと思いました。
- 普段は会社で動画の仕事と、自宅にて自分に足りていないと思うスキルの鍛錬をしているのですが、今回のワークショップのような手順(設定を正しく理解してその演技をし、時間を測ってそのキーとなる絵を描き、ブレイクダウンや単純な中割りとなる間の絵を描く)で絵を描くことを、自分だけでやったことがありませんでした。しかし、今回やったことには原画マンに必要なことの全てが含まれていて、動画経験のみの自分にとって、刺激になることが沢山ありました。
Q.今回の体験は面白かったですか?
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