令和7年度『アニメーションブートキャンプ仙台』実施レポート
令和7年10月18日(土)と19日(日)に「アニメーションブートキャンプ仙台」が開催されました。
このワークショップのねらいは、アニメーション表現の核となる「伝わる表現」の基礎となる考え方を、体験的・協同的に学んでもらうこと。参加者は5つのグループに分かれ、2D手描きの課題に取り組みました。
会場は仙台デザイン&テクノロジー専門学校。仙台を中心に各地から25人※が参加しました。
※参加者内訳:専門学校生20名、大学生3名、高校生1名、無所属1名。/ 参加者居住地:宮城19名、福島2名、岩手1名、新潟1名、愛知1名、東京1名。

今回、指導にあたった講師は以下の5人です。
- 後藤 隆幸(アニメーター・キャラクターデザイナー/株式会社プロダクション・アイジー)
- 斉藤 拓也(アニメーター)
- 富沢 信雄(アニメーション監督/株式会社テレコム・アニメーションフィルム)
- りょーちも(アニメーター、キャラクターデザイナー、アニメーション監督、CGディレクター、Blenderおじさん)
- 漁野 朱香(アニメーター/株式会社スタジオポノック)

はじめに
ワークショップ1日目は、竹内ディレクターから、ブートキャンプの進め方についてオリエンテーションの説明があった後、五感を目覚めさせるための身体を動かすレッスンからはじまりました。メトロノームを使用して様々なテンポで歩いたり、架空のボールやなわとびで遊ぶ「エアキャッチボール」「エアなわとび」などを体験したりしながら、動きのイメージを他者と共有することを学びます。


課題の説明
身体を動かした後は、5つのグループに分かれてアニメーションの課題に移行します。
まずは導入課題として、アニメーションの基本である「歩き」に取り組みます。小さな子どもが歩いている状況の設定シナリオと歩きのニュアンスを伝えるオノマトペ(擬音語・擬態語)が示され、その演技を他者に伝わるようにアニメーションで表現する課題です。まずは実際に歩いてみて、グループ内での演技イメージの共通認識を固めます。またメトロノームアプリを用いて、演技の基本テンポを設定します。

サムネイル
演技の方向性が固まったら、「サムネイル」と呼ばれる小さなラフスケッチで主要なキーポーズを描いていきます。まずはグループ内で各自の描いたキーポーズを見比べて最適なポーズを選び出し、それをグループ全体の共通演技のキーポーズとします。その後、各自がアニメーション制作を進め、成果を上映しました。上映に際しては、布山ディレクターが新たに開発したKoma Playerというビューアーを使用し、複数作品を同じタイミングで繰り返し再生して見比べられるようにしました。


「歩き」の講座
上映後、富沢講師と後藤講師による「歩きの解説」が行われ、「歩き」の留意点について理解を深めます。


メイン課題
次はいよいよメイン課題です。基本の絵コンテを元に、各カットを1人ずつ担当し、計5カットのシーンを完成させます。小さな子どもが箱を持ち上げて運ぶという簡単なストーリーですが、箱の中身は「軽い風船」か「重いお米」という異なる設定が指定され、その重さを動きだけで観客にわかるように表現しなければならないという、奥の深い課題です。
教室内には、風船や水が入った箱が用意され、実際にその重さを感じてポーズを確認しながらサムネイルを描いていきます。またグループ内でお互いの演技の認識にズレが生じないように、この課題でもオノマトペとテンポをはじめに決めてもらいました。

「走り」の講座
またメイン課題では演技によっては「走り」も含まれるため、後藤講師から「走り」の基本講座も行われました。

KOMA CHECKER
1日目は各カットのレイアウト撮影までを進めました。撮影には、布山ディレクターが開発したKoma Checkerというソフトウェアを使います。

2日目
2日目はラフアニメーションの段階に入っていきます。限られた時間の中で、講師たちは言葉で助言するだけでなく、実際に絵を描いて見せながら、基本的なポーズの考え方や作画のコツを、丁寧に指導していきます。



完成上映
2日間の制作を終え、全てのグループの完成作品が上映されました。上映時には自分たちがイメージしたオノマトペを効果音としてあててもらいました。

Q&Aセッション
上映の後、講師とのQ&Aセッションが行われました。受講生からのさまざまな質問に対して、5人の講師たちがそれぞれの経験にもとづいて丁寧に回答していました。

Q&Aを終え、最後は講師から受講生たちにブートキャンプの修了証が手渡され、全プログラムを終了しました。
参加者アンケートからの抜粋
Q.ブートキャンプに参加して自分の中でどのような変化がありましたか?
- アニメーションを作る上でのちょっとした勘違いしていた事や、凝り固まった考え方を取っ払う事ができた。
- 歩きのアニメーションにとても時間をかけて、動きに対する目の向け方がかわった。
- 今まで何となく動かしていたのが、理屈を考えるようになれた。
- 演技の重要さに気づいた。
- 動きが分からなくなったら実際に自分で動いてみるようになった。
- ラフな線でも動きの完成が見えてくることを実感し、アニメ作りに対する考え方が柔軟になりました。
- 意識するところや自分に足りないことが何かはっきりとわかって、やるべきことが見えた。
- 描くスピード感が変わる。
- 一つの動きに対する熱意が変わった。
- もともとアニメーターになりたいと考えていたので、今回の体験でより強くその道に進みたいと考えました。
- 自分に足りないものと、すぐにやるべき事が見えて目標ができました。
Q.今回のワークショップで、あなたはどのようなことを学んだと思いますか?
- 実際に体を動かして体験してそれを絵としてアウトプットすること。
- 中割の仕方やタイムシートなど、今まで知らなかったことや、理解しづらかったことについて、困るたびに教えて貰えたので多くの基礎的なことが学べた。
- 動かし方ではなく、どのように考えたら自分の理想に近づけられるのかという、ここでしか学べないことを学んだ。
- アニメーションの基礎のことから、個人的に悩んでいた誇張表現のことまで学べたので良かったです。
- 今回のワークショップでコミュニケーションの必要性と自分の手癖を知れたこと、描くだけでなく話し合いの大切さを学べた。
- 動きの体感。
- いきいきした動きのつくり方、アナログ作画の楽しさ。
- 人の動きがここまで複雑で、感情や性格、描く人の表現や感じ方で変わることを学びました。
- アニメーション制作では日々の経験が生き、演技への理解がより良い作品作りに繋がることを学びました。時間に追い込まれた時の筆の乗り方も初めて感じることができました。2日間とても有意義な時間になりました!ありがとうございました!